「支払明細書と領収書との違いがよくわからない」
「支払明細書は領収書の代わりにしていい?」
こんなお声をよく聞きます。
支払明細書は、取引内容や支払額を正確に確認するための書類で、ビジネスではよく利用されています。法人同士の商取引に用いられるのはもちろんですが、個人がクレジットカードで買い物をすると、決済日、購入品、金額など、カード利用に関する詳細を記録した書類として利用されています。
本記事では、混同しやすい「支払明細書と領収書」について、わかりやすく解説しています。具体的な書き方も紹介しているので、参考にしてください。
領収書と支払明細書の違いって?知っておきたい基本情報
企業により支払明細書の扱い方は異なりますが、領収書と同等の効力を持つと定める企業もあります。しかしながら、支払明細書の発行は法律で定められておらず、納品書や領収書ほどの強い効力を持っていませんが、取引内容の安全性を担保するための書類として、重要視する企業が実に多くあります。
ここからは、支払明細書の定義について解説します。
支払明細書・領収書・請求書の違いとは?
支払明細書、領収書、請求書はそれぞれ明確な違いがありますので、まずは以下の一覧表でご確認ください。
既に支払が 完了している |
取引内容を 証明している |
支払請求ができる 効力を持つ |
|
支払明細書 | × | ○ | × |
領収書 | ○ | △ | × |
請求書 | × | ○ | ○ |
【支払明細書】
・最大の目的は取引内訳や料金を明確に確認することです。
・支払明細書の発行段階では、支払いは完了していません。
・相手方への支払要求・督促要求はできません。
【領収書】
・支払確認ができた後に発行されます。
・支払いが確実に実行されたことを証明します。
・「支払証明書」と言い換えられる書類です。
【請求書】
・支払料金を求めるための書類です。
・支払明細書のように取引内訳も記載される傾向が高くなっています。
このように、支払明細書、領収書、請求書はそれぞれに異なる目的と役割を持っています。
支払明細書の内容は領収書や請求書への組み込みや添付される事もあるので、取引状況により柔軟な対応が必要です。
また、領収書や請求書に組み込まれる場合には「領収書兼支払明細書」や「請求書兼支払明細書」という書類名に変更されます。
支払明細書は領収書の代わりになるの?
領収書は、確実に支払いがなされたことを証明する重要な書類です。
領収書は、確定申告や企業の収支管理を徹底するためにも必要な書類なので、税務調査への対応をするため、保管義務は7年と長い期間が定められています。
領収書は非常に重要な役割を担う書類ではありますが、紛失や先方の未発行などで領収書がない場合は、支払明細書に決済証明書や決済メールなどを複数組み合わせることで、確実に支払いがあった事を証明できれば、大きな問題にはなりません。
このことから「支払明細書は領収書の代わりになる」といえますが、あまりにも件数が多い場合や支払額が高い場合には、税務調査の対象になる事があるので、領収書での確認を徹底することをおすすめします。
支払明細書は何のための書類なの?
支払内容が不明確な状態での支払い、受け取りなどの金銭授受は、トラブルの原因になりかねません。
こうしたトラブルを回避するために、どんな内容なのか、支払い額の理由などを詳しく明記し、発行しているのが支払明細書です。
また「支払い内容に相違ない事を双方が確実に確認する」という意味でも利用されることが多く、支払額に齟齬が起こらないよう事前確認を目的としている場合もあります。
1. 給与・賞与・退職金の支払明細書
企業が従業員へ給与や賞与を支払う際には、支払明細書を発行していますが、これを「給与明細書」「給与支払明細書」と呼ぶ企業もあります。
この発行は「給与や賞与を支払われる従業員と企業との間に金額の誤認がないこと」が大きな目的です。
そのため、支払明細書に支払額の計算過程を記載している事も多く、双方が明確な理解をしている事を示している企業が増えています。
また、退職金は確定申告に必要になる事から、受給者から支払金額や計算過程の明示を求められる事があるので、退職金支払時にも支払明細書を発行する企業が増えています。
ただし、支払明細書へは法的な発行義務が課されていないので、会社規定に準じて発行している企業がほとんどです。
2.配当の支払明細書
企業が株主へ配当金の支払いを施行する場合も、支払明細書が発行される場合があります。
一般的に「配当金支払明細書」と言われているこの支払明細書は、「支払通知書」としての役割を果たす事があり、非常に重要な役割を持ちます。
この場合には一般的な支払明細書と形態が異なるので、作成には注意が必要です。
3.業務委託への支払い明細書
働き方が多様化したことで、他社や個人などへ業務委託をする企業も非常に増えてきています。
増えてきているからこそ、業務委託へ報酬を支払う際にも、支払証明書を発行する事が一般的です。
この支払明細書には、支払報酬の内訳や具体的な契約額などの詳細を記載し、双方の金銭的トラブルを防ぐことが大きな目的です。
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領収書の目的と用途
領収書は支払いの施行を証明する書類なので、商取引に限らず何らかの支払いが起きた時には、必ず発行する書類です。
また、その支払が企業の経費に該当する場合は、経費計上に該当することを証明をするためにも領収書の受け取りが必要不可欠です。
領収書がなければ経費承認をできない可能性が高く、税務調査の対象と見なされる恐れがありますので、領収書の受領と保管を徹底している企業がほとんどです。
領収書に記載すべき必須事項
消費税法では「支払者から代金を受け取った日付(日付)」「買い手の氏名・名称(宛名)」「提供した商品やサービス内容(但書)」「金額」「領収書の書類作成者(発行者住所氏名)」が記載されている書類が領収書であると定めています。
領収書発行には記載項目とルールがあるので、一つずつご紹介します。
・日付:支払者から代金を受け取った日付を年月日で記載入
※西暦・和暦ともに省略形は認められません。
・宛名:支払者の氏名や企業名を正式名称で記載
※上様や無記名でも領収書が証明力を失うとはされていません。
・但書:商品やサービス内容を簡略化して記載
・金額:3桁毎に桁区切りの「,」を付けて、税込額で記載
※数字の前に「¥」、末尾に「ー」や「也」を付けます。
・発行者:領収書の書類作成者の住所、電話番号、氏名(店舗名)を記載
※社印でも問題ありません。
支払明細書の書き方
支払明細書には定められた書式がなく、各企業がそれぞれのフォーマットで作成しています。
しかしながら、取引時や先方へお渡しする書類なので、支払明細書を受け取る側の事を考慮して作成するのが基本マナーです。
それでは、支払明細書の基本的な書き方をご紹介します。
1.表題は「支払明細書」
書類の表題には「支払明細書」と明記します。
支払明細書は領収書や請求書と混同しやすいので、先方に混乱をきたすことは絶対に避けなければなりません。
こうしたことから、表題には「支払明細書」と記載し、他書類と区別ができるよう対策しましょう。
領収書や請求書への添付を予定している場合は、表題を「領収書兼支払明細書」や「請求書兼支払明細書」へ変更し、どのような書類なのかを明確にします。
2.発行した日付/相手方の企業名や個人名
表題の「支払明細書」の右横には、作成日または書類発行日を記載します。
発行日の記載があると、内容誤認を防いだり修正前後の確認ができるなど、双方が正確に内容を把握することに役立ちます。
また、和暦を基本に日付記載をすることが一般的である事を覚えておくとよいでしょう。
取引相手が法人の場合は社名、個人の場合には個人名を記載します。
3.発行側の企業名・取引内容・個人名/会社印・個人印を捺印
詳細を一目で理解できるように、商品名(サービス名)、個数、単価などの取引内容を詳しく明記します。
次に発行元情報として、発行側の企業名・個人名を記載しますが、住所や電話番号、担当者名も明記するようにしましょう。
最後に、発行元情報と重なるように、会印や個人印を捺印します。
今尚根付いている印鑑文化の象徴ではありますが、会社印や個人印は正式な書類であることを証明するものなので、捺印を忘れないようにしましょう。
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支払明細書の電子化も視野に
支払明細書の社内共通テンプレートがあれば、記載項目の不足や漏れを防止する事ができ、体裁を統一できるので、支払明細書の利用頻度に関わらず、テンプレート化を検討されるとよいでしょう。
また、国税庁から帳票電子化の指示が強まっているので、これを機に支払明細書等の帳票類の電子化を進めてもよいでしょう。
電子化することで作業簡略化や短縮化も実現できるので、人件費削減に大きく繋げるkす。
まとめ
支払明細書、領収書、請求書は、それぞれに目的や記載内容、役割などが大きく違うので、誤って作成したり渡したりしないよう注意しなければなりません。
支払明細書は、法的な作成義務を課されている書類ではありませんが、取引内容の詳細や金額を双方が正確に確認ができる事から、ビジネスシーンでは重要な役割を果たしています。
定められた形式等はありませんが、ビジネスマナーの一つとして覚えておきましょう。