売掛金も未収金も「まだ代金を受け取っていないが将来受け取れる予定」の債権です。
どちらも将来回収できるという点では同じですので、それぞれの違いが理解できないという方も多いのではないでしょうか?
確かに会社にとっては将来的に受け取れる資産という点では同じですが、会計処理上、売掛金と未収金は大きく異なりますし、貸借対照表に表示する際にも分類が異なります。
売掛金と未収金の違いをしっかりと理解するとともに、会計処理も適切にできるようにした方がよいでしょう。
売掛金と未収金の違いについて詳しく解説していきます。
Contents
売掛金とは
売掛金とは掛け取引で商品を販売した時に発生する「将来、代金を受け取る権利」のことで営業活動に伴い発生するものです。
日本の商慣習においては「支払いは後」となることが多いので、このような掛け販売の際には、売上計上の際に売掛金が発生します。
売掛金は将来的に代金を受け取る権利ですので、資産に分類されます。
売掛金という仕組みを利用することによって、取引の都度、代金を支払ったり、
手形や請求書を発行したりする手間を省くことができます。
あくまでも「信用」によって取引をしていることから、売掛先が代金を支払わずに貸し倒れてしまうリスクがあることも理解しておきましょう。
仕訳方法や注意点について詳しく解説していきます。
売掛金の仕訳
売掛金は、「売上が発生した時」と「代金を回収した時」の2回に分けて仕訳がでてくるという点に注意しましょう。
100万円の商品を掛取引で売り上げた場合の仕訳は次のようになります。
・売上発生時
借方 | 貸方 |
売掛金 100万円 | 売上 100万円 |
売上の対価として売掛金という資産を受け取ったという仕訳になります。
・売掛金回収時
借方 | 貸方 |
預金 100万円 | 売掛金 100万円 |
売掛金代金が預金口座へ支払われた場合には上記のような仕訳になり、預金という資産と売掛金という資産を交換する処理を行います。
日本の会計は「発生主義」と言って、実際に現金や預金が動いていなくても、商品やサービスを相手に提供した時点で売上が発生し、会計処理をしなければなりません。
そのため、売上が発生した際に仕訳を行い、売上代金が入金になった際にも再度売掛金の仕訳が必要です。
売掛金の注意点
売掛金を利用すれば、取引の都度、支払いをする必要はありませんし、手形や請求書作成の手間もかかりません。
しかし取引先に対して売掛金を用いて販売をする際には次の点に注意が必要です。
- 貸し倒れる可能性がある
- 時効がある
- 期日になるまで資金化できない
売掛金の入金期日に本当に代金が支払われるかどうかは不透明です。
また期日前に取引先が倒産して貸し倒れてしまい、不良債権になってしまうリスクがあります。
さらに売掛金は期日になるまで資金化できない債権ですので、売掛金での売上が多ければ多いほど、資金繰りが悪化する点にも注意しなければなりません。
未収金とは
未収金とは営業取引以外の取引によって生じた債権です。
例えば「会社が所有する自動車を売却した」というような場合には、営業取引以外の取引に該当します。
この際の販売を掛け取引とした場合には、未収金が発生します。
未収金も売掛金も同様に将来的に代金を受け取る権利である債権ですので、資産に該当します。
未収金には具体的にどのようなものが該当するのか、仕訳方法や注意点とともに詳しく見ていきましょう。
未収金に該当するもの
未収金に該当するものとしては次のようなものが挙げられます。
- 機械など固定資産の売却代金の未回収分
- 保有する有価証券の譲渡の売却代金の未回収分
- 自社用車を売却した際の未回収の代金
- 自社で管理する建物を売却した際の未回収の代金
- 自社が管理する建物を貸し出した際の未回収の代金
このように基本的には自社のサービスや商品など、売上に関わるもの以外の資産を売却した場合や、資産を貸し出した際の代金で未回収分がある場合には、「未収金」として分類いたします。
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未収収益とは
未収金と似たような勘定科目として「未収収益」という勘定科目が存在します。
未収収益とは、企業の主な営業取引以外の取引で発生する金銭債権で、継続してサービスを提供する取引で、将来の入金が見込まれるものをいいます。
例えば、貸金業者以外の企業が金銭を貸し付けた際の利息や、企業が保有する不動産の家賃などが該当します。
未収収益は企業によっては未収金として分類していることも多いですが、企業会計原則では、未収金と未収収益は区別して計上することが求められています。
未収金の仕訳
未収金も売掛金と同様に発生主義で仕訳を行います。
そのため、「未収金が発生した時」と「支払いが履行されて未収金が解消された時」に分けて以下の2つの仕訳を行います。
自社の社用車を100万円で売却し、売却代金の入金は翌月末とした場合の仕訳は次のようになります。
・未収金が発生した場合の仕訳
借方 | 貸方 |
未収金 100万円 | 自動車 100万円 |
未収金という資産を増やし、売却した自動車を無くすという仕訳が必要になります。
・未収金が解消した際の仕訳
借方 | 貸方 |
預金 100万円 | 未収金 100万円 |
未収金の勘定科目を消去し、預金勘定と未収金を交換する仕訳を行います。
未収金を解消した際にも、売掛金と同じように対価として受け取った預金や現金などの資産と未収金を交換して、未収金を消去する仕訳を行います。
未収金の注意点
未収金を使用して取引する際には次の3点について注意しましょう。
- 相手先の信用状況を確認する
- 経過勘定の処理を忘れない
- 資金繰りを意識する
未収金も売掛金と同じように、相手先の資金繰りや業況が悪い場合には未収金が回収できない場合があります。
そのため相手先の業況を確認し、「支払いに問題がないか」ということを確認することが非常に重要です。
取引銀行や共通の取引先企業に確認するなどして、相手先の信用状況がどのようになっているのかの確認を怠らないようにしましょう。
未収入金などの勘定科目は、当期の損益を正確に把握するために貸借対照表に表示されるものです。
当期の損益を便宜的に表示されているものですので、未収入金は決算の際には特別な会計処理が必要になります。
ルールに則って処理をしないと、正確な経過勘定の処理ができなくなってしまうので十分に注意してください。
未収金は資産ですので、未収金が計上されていることで貸借対照表がよく見えるようになります。
しかし、未収金は資金回収が行えていない資産であるため、未収金が多いと資金繰りが圧迫されます。
特に資金繰りに困窮して会社の不要な資産などを売却するようなケースでは、資金繰りを意識して、未収金が入金になるまで資金繰りに問題がないかを確認するようにしてください。
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売掛金と未収金の違い
売掛金と未収金には主に次の3つの違いがあります。
- 本業(営業活動)で生じた債権か否か
- 長期間回収できない場合の勘定科目の分類の違い
- 対となる勘定科目
なぜ、売掛金と未収金を分けて会計処理しなければならないのかの理由とともに、売掛金と未収金の違いについてしっかりと理解しておきましょう。
本業で生じた債権か否か
売掛金は本業で生じた債権に対して利用され、未収金は本業以外の取引で生じた債権に対して利用される勘定科目です。
つまり商品やサービスの売上の未回収分については、本業で生じた債権ですので「売掛先」を使用します。
他方、不動産の売却や、自動車を売却した場合などの売却代金の未入金分については「未収金」という勘定科目を使用します。
長期間回収できない場合の勘定科目の分類の違い
売却代金を長期間回収できない場合には、売掛金と未収金は勘定科目が若干異なります。
売掛金は回収までの期間がいくら長くても、原則的には「売掛金」として流動資産の欄に表示し続けます。
一方、未収金は本来は流動資産ですが、回収までの期間が1年を経過した場合には「長期未収入金」という勘定科目へ変更します。
「長期未収入金」は固定資産となります。
未収金は回収までの期間が1年を超える場合には、流動資産から固定資産になることはしっかりと覚えておきましょう。
売掛金と未収金は回収までの期間が1年を超えた場合の、勘定科目の分類の違いが異なります。
対となる勘定科目
「売掛金」の対になる勘定科目は「買掛金」です。
買掛金とは商品やサービスを販売するための仕入れを行った際に、掛取引をする際に発生する債務です。
取引先から販売用の商品を仕入れた場合、その掛取引の代金が買掛金に該当します。
「未収金」の対になる勘定科目は「未払金」です。
未払金は、業務とは無関係の支払いを行う際に発生した未払の代金を指します。
例えば、従業員が移動のために使用する自動車を購入する場合、購入した自動車の代金を未払いの場合「未払金」という勘定科目を使用します。
売掛金とは未収金では対となる勘定科目も異なると理解しておきましょう。
売掛金と未収金を区別して仕訳する理由
売掛金と未収金を区別して仕訳する理由は次の2点です。
- 税務署に不正会計を疑われないようにするため
- 金融機関の融資を受けやすくするため
未収金と売掛金は発生する原因が異なります。
未収金は本業以外から生じる債権ですし、売掛金は本業から生じる債権です。
そのため、貸借対照表で何から生じた債権なのかを明確にしておくことで、「この会社はしっかりと決算をしている」と判断されます。
他方、未収金と売掛金が一緒くたになっており、例えば売掛金の金額が売上に比して明らかに大きい場合などは滞留債権がある可能性を疑われることがあります。
また、銀行も融資の際には当該企業の決算書を確認しますが、この際に売掛金と未収金がしっかりと区別されて計上されている正しい決算書かどうかという点も確認します。
売掛金と未収金が区別されていない決算書はしっかりと決算処理がされていないと判断されることもあるので、銀行融資では不利になることがあります。
売掛金と未収金は「将来的に入金が予定されている債権」という点で、経営者にとっては同じです。
しかし債権が発生した原因が本業なのか本業以外なのかという大きな違いがあるので、決算書でもしっかりと区別しておくことによって、決算書の信用が生まれて税務署や銀行から「正確な決算書だ」と理解されやすくなります。
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まとめ
売掛金も未収金も、将来的に入金予定になる債権という点では同じです。
しかし売掛金は本業によって生じた債権で、未収金は本業以外から生じる債権です。
また、回収から1年超経過した場合であっても売掛金はそのまま売掛金として流動資産へ計上しますが、未収金は長期未収金という勘定科目に代わり固定資産に計上されます。
このように、売掛金と未収金は経営者にとっては「将来的にお金が入ってくる」という点では同じですが、その原因が異なるので、ルールに沿って正しく計上しなければなりません。
正しく会計処理をしないと税務署や銀行などから不正会計を疑われたり、融資で不利になったりすることもあるので、日頃から売掛金と未入金を正確に分類できるようにしておきましょう。