財務部と経理部、どちらも会社のお金に関わる仕事ですので「同じような部署では?」と考えている人も多いのではないでしょうか?
確かに「お金に関わる」という点では、財務と経理は同じですが、仕事の内容は180度と言っていいほど大きく異なります。
そこで、この記事では財務と経理の仕事内容を解説するとともに、それぞれの違い、業務効率化の方法について解説していきます。
中小企業の中には財務部門を持たずに経営陣が担うケースも多いですが、どんな会社にも財務も経理も本来は必要です。
それぞれの仕事内容や効率化の方法をしっかりと理解しておきましょう。
経理業務の主な仕事
経理業務の主な仕事は次の5つです。
- 売掛、買掛管理
- 在庫管理
- 経費管理
- 預金現金の管理
- 月次業績管理
このように、経理業務ではすでに発生した取引に対する様々な処理を行うのが主な仕事です。
経理業務の主な5つの仕事内容について、詳しく見ていきましょう。
売掛、買掛管理
売掛金や買掛金を管理することは経理の重要な仕事です。
販売先に請求書を送り入金状況や売掛金残高を管理します。入金遅れがあったら督促を行うようにするのも経理部門の仕事です。
また、仕入先に対して負っている買掛金の支払いや残高の管理をするのも経理の仕事です。
複数の仕入先を抱えている場合には、仕入先ごとにいくらの買掛金が残っているのか、今月の支払いはいくらなのかを計算しなければなりません。
売掛金や買掛金の管理は、取引先ごとに残高の把握だったり、入金確認や支払手続きを行わないといけないので非常に煩雑な仕事です。
また、入金漏れや支払漏れがあったりした場合、財務状況に影響があったり、取引先にご迷惑をおかけすることにもなりかねません。
だからこそ、売掛金や買掛金の管理は非常に重要な経理の仕事だと言えるでしょう。
在庫管理
自社の棚卸商品や在庫などがどのくらいあるのかを管理しなければなりません。
在庫管理のために定期的に棚卸しを行うのも経理の仕事の1つです。
経理が主導となって棚卸しを定期的に行うことによって、適切な在庫量になっているかを把握できますし、在庫と帳簿が合わない事態を防ぐことができます。
特に、不要な在庫を抱えることはキャッシュフローに悪影響を与えることなどから、
経営の視点からは、在庫管理は非常に重要です。
在庫管理は経理部門にとって非常に重要な仕事の1つだと言えます。
経費管理
従業員が使用した経費の管理を行うのも経理部門の仕事です。
従業員が使った交通費などの経費を精算し、会計処理を行います。
おかしな経費がないか、先月と比較して増えていないか、などを現場レベルでチェックするのも経理部門の重要な仕事だと言えます。
預金現金の管理
預金や現金の残高と現金出納帳の残高が合っているのかの管理を行うのも経理の重要な仕事です。
帳簿残高と預金や現金の残高が合わないと、横領などの不正が起こっている可能性などが疑われますが、経理部署がしっかりと帳簿残高と預金現金の残高が合っていることを定期的に確認することによって、不正を未然に防ぐことができます。
月次業績管理
毎月、売上や支出がいくらあったのかを締めて、月次で業績を管理するのも経理の仕事です。
経営陣は経理部門の持ってきた月次業績を参考に翌月以降の戦略を立てていくのが基本的な業務内容です。
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財務業務の主な仕事
財務業務の主な仕事は次の通りです。
- 資金調達
- 予算策定
- 資産運用
- 財務戦略の策定
- IRや監査対応
- 内部統制(ガバナンス)
- 貸付金管理
- 借入金管理
財務部門では、これから使うお金をどう配分するか、どこから調達するのか、という点に関わることが主な仕事内容になります。
財務業務の主な仕事内容について詳しく見ていきましょう。
資金調達
財務部門の最も大きな仕事の1つが資金調達です。
会社の運営や投資に必要な資金を外部から調達を行います。
具体的には銀行からの借入金、社債の発行、新株発行などの手段で必要な資金を調達します。
具体的にどの方法で資金調達するのがベストなのか、どのような方法や間隔で返済していくのか、などの資金調達計画を立てていくのも財務部門の重要な仕事だと言えます。
予算策定
予算策定に関わるのも財務部門の重要な仕事です。
前年の実績から、どの程度の予算をどの部署へ使っていき、どんな目標を掲げるのかということを策定していきます。
これは経営陣の仕事に近いので、その意味で、財務部門は経営に最も近い部署の1つだと言えるでしょう。
予算に対して実績がどのようになっているのかということを管理する、予実管理を行うことも財務部門の重要な仕事だと言えます。
資産管理・投資戦略の策定
会社の資産運用に関わることも財務部門の仕事です。
例えば不動産を保有していたら、その不動産をどこかに貸したり、売却するなどの計画を策定します。
また会社の内部留保についても、資金をどこに投資して、どのような効果を期待するのかなどの計画を策定します。
目先の利益にとらわれるのではなく、どうすれば企業にとって最適な資産運用ができるのかを長期的な目線で検討しなければなりません。
会社には預金や不動産をはじめとした様々な資産があるので、この資産をどのように運用していくのかの計画を立てることも財務部門の重要な仕事です。
財務戦略の策定
全体の財務戦略を立てることも財務部門の仕事です。
財務戦略とは、経営目標を達成するための資金調達や投資計画を立てることです。
経営陣から命じられる経営部門達成のためには、いくらの開発費や広告費がかかるのかを検討し、そのためにはいくら資金調達が必要なのかの全体の計画を立てていきます。
経営陣の立てた目標、昨年の実績、各部署の能力、不足している投資は何か、どの程度資金調達ができそうか、ということをしっかりと検討して、企業にとって最大限のパフォーマンスを発揮できる財務戦略を立てていきます。
IRや監査対応
IRや監査の対応(特にディスクロージャー面)を行うことも財務部門の仕事です。
上場企業では投資家向けの情報公開を行わなければなりませんし、監査法人による監査も行われます。
投資家にとって分かりやすいIR(投資家向けの広報資料)を作成し、監査法人が監査が円滑に進むように資料を準備するのをサポートするのも基本的には財務の仕事です。
対外的な仕事も多いので、財務部門は会社の経営の全体像を把握する必要があります。
内部統制(ガバナンス)
内部統制は各部署が行うものですが、財務部門も内部統制を厳格にしなければなりません。
財務に関する内部統制としては、不正会計や横領、情報漏洩などが挙げられますが、財務部門が「どんなリスクがあるか」を判断して、不正が起こらないように様々な管理体制を構築していきます。
財務部門は会社にとって心臓部に近い部署ですので、ガバナンスについても厳格にルールを策定し体制構築をしていく必要があります。
貸付金管理
役員や他社などへの貸付金があるのであれば、貸付金を適正に管理するのも財務部署の重要な仕事です。
貸付の話があった時「融資するかどうか」という判断をしたり、融資したお金の返済状況の管理を行います。
借入金管理
借入金がある場合にはその管理も行います。
特に社債の発行によって資金調達する際には、財務部門にとっては重要な仕事の内容になります。
社債のクーポンはどうするか、償還期限はどうするかなど具体的な発行条件を決めて広告の設定や見積書の発行などを行います。
また少人数私募債ではない通常の社債を発行する場合には証券会社を通すことになるので、証券会社との打ち合わせも行います。
社債の発行を通した借入金の管理を行うことも財務部門の重要な仕事です。
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経理部門と財務部門の違いとは
経理部門と財務部門は、同じくお金に関連する部署ですが、その仕事内容は大きく異なります。
違いはいくつもありますが、主な違いをまとめると以下のようになります。
- 過去のお金か未来のお金か
- 経営陣への近さ
- 重要な意思決定を行うか否か
いつ時点のお金に関する業務なのか、経営陣にはどの程度の距離なのか、また、意思決定を伴うかなどが主な違いです。
財務と経理の3つの違いについて詳しく解説していきます。
過去のお金か未来のお金か
すでに使った過去のお金の処理を行うのが経理の仕事です。
仕入や経費の支払いなどはすでに使ったお金の処理です。
また、売上から生じる売掛金管理も、過去にすでに使用した売上に関連した処理を行っているだけですので、基本的に経理の仕事は「過去のお金や過去の取引の処理」を行うのが主な仕事になります。
一方、財務はどちらかといえば、将来使うお金を調達したり、将来使うお金である予算を立てるのが主な仕事です。
「来年はどの部署へどの程度資金を投入するのか」を決めるのが予算ですし、資金調達はこれから会社で使うお金を外部から調達することです。
つまり財務部門は将来のお金の使い道を決めて、そのお金を調達するのが主な仕事です。
上記のようにとらえると、経理と財務は過去のお金を扱うのか、将来のお金を扱うのかという点が最大の違いといえるかもしれません。
経営陣への近さ
経営陣への近さも経理と財務では異なります。
財務は投資戦略や予算を策定するので、経営陣と非常に近い位置で仕事をします。
経営陣から命じられた目標達成のために必要な資金を投入し、予算を決めるのが財務の仕事であるため、頻繁に経営陣と顔を合わせて意見を交換します。
一方、過去の取引の処理を行う経理部門は事務仕事が主になるので、経営陣との距離はそれほど近くありません。
財務の方が経営に近いので、財務部長からCFOなどの経営部門へキャリアアップする人も多くいます。
会社内での経営への近さという点で経理と財務は大きく異なります。
重要な意思決定を行うか否か
業務の中に「重要な意思決定」が含まれるかどうかという点でも、経理と財務は大きく異なります。
経理部門は主に過去の取引を処理することですので、意思決定はそれほど伴わないのが特徴です。
一方、財務部門は予算を決める際、資金調達手段を決める際、会社の資産の投資先を決める際など、頻繁に意思決定が必要な場面が登場します。
財務部門は経営陣に近い分、意思決定を伴う仕事が多いという点も、経理部署との大きな違いだと言えます。
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財務部門がガバナンスを担う重要性とは
財務部門が会社のガバナンスを担うことは会社の信用を確保する上で非常に重要です。
財務部門が会社のガバナンスを担うことによって次の2つの効果があります。
- 粉飾決算や横領などを防ぐことができる
- 無理な投資や外部取引の不正を防ぐことができる
端的に言えば、財務部門がしっかりとガバナンスを担うことで、会社を不祥事から守ることが可能です。
粉飾決算や横領などを防ぐことができる
財務部門がガバナンスを担うことによって粉飾決算や横領などを防ぐことができます。
財務部門が決算を策定し、予実管理も行うので、おかしなお金の使い方があればすぐに担当部門が把握することができます。
財務部門は決算やお金の使い方など、会社の数字の根幹を司どる部門です。
財務部門がガバナンスをしっかりと担うことによって、粉飾決算や横領など、外部からの会社の評価を落とすような不祥事を未然に防ぐことができます。
無理な投資や外部取引の不正を防ぐことができる
財務部門がしっかりとしたガバナンス体制を敷いていれば、無理な投資やおかしな外部取引も予防できます。
投資や外部取引は財務部門が担うので、しっかりと「どんな基準やプロセスで意思決定する」というルールを明確に定めておくことによって、投資や外部取引の不正を防ぐことが可能です。
財務部門の業務を効率化する方法
財務は会社の中でも非常に大切な業務ですが、その仕事の範囲は膨大で、中小企業の中には財務部門を持っていない会社も多々あります。
そこで、次のような方法で財務業務を効率化していきましょう。
- 会計士や税理士などの専門家へ相談する
- ERPを導入する
最後に、財務業務を効率化する方法について詳しく解説していきます。
会計士や税理士などの専門家へ相談する
会計士や税理士などの専門家へ財務部門の仕事をアウトソーシングすることができます。
海外では会社の業務の一部をアウトソーシングするのが一般的ですので、会社の中に財務部門を作成するのであれば、会社の財務部門の一部を会計士や税理士へ委託してしまうのも有効な方法です。
ERPを導入する
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、日本語に訳すと「統合基幹業務システム」といいます。
ERPでは「会計」、「生産」、「物流」、「人事」、「販売」などの情報を一元管理することができるので、従来であれば個別の部署で行っていたデータ管理を財務部門で一括で把握することができます。
ERPによって各部署と情報のやり取りを行うことなく、財務部門独自で情報の把握と分析を行うことができるので、財務部門の予実管理を圧倒的に効率的に行うことが可能です。
「自社の財務部門を効率化したい」という場合には、ERPの導入を検討しましょう。
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まとめ
経理部門はすでに完了した取引の会計処理や入出金管理を行うのが主な仕事です。
仕事のメインは事務処理になるので、意思決定をする仕事はそれほど多くありませんし、経営陣との距離感も近くはありません。
一方、財務部門は予算管理や資金調達が主な仕事ですので、将来使うお金に大きく関わります。
投資の意思決定も行うので経営部門に近く、ガバナンスにも深く関わる仕事だと言えるでしょう。
財務部門の仕事は多岐にわたる上、中小企業は財務専門の部署を設定しているわけではないので財務業務を効率化したい場合には、会計士などの専門家へアウトソーシングするか、ERPなどの導入も検討するのがよいでしょう。