「原価計算のやり方がイマイチ分からない」「そもそも”原価”って何を指すの?」というお悩みを抱えている経理担当者の方は多いようです。
この記事ではこのような経理初心者に向けて、そもそも原価計算をする理由や基礎知識、原価計算の種類や実際の計算方法と使い分け方について分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、原価計算の基本を理解し正しく経理処理ができるようになります。
原価計算とは?
まず原価とは「売上」に対する元値という意味です。
その元値の中には、製品を構成する材料はもちろんのこと、製品をつくるための人件費や機械の減価償却費なども含まれます。
売上を得るため、企業が持つ経営資源の消費を具体的に算出するのが原価計算といえるでしょう。
特に製造業においては工業簿記のルールで製造原価を分類し集計し、損益計算書に連動するため必須な処理です。一方サービス業などでは、工業簿記を使用せず原価計算をするケースもあります。
原価計算の目的とは?
原価計算をする目的は、企業会計審議会の「原価計算基準」において5つ示されており、以下のとおりです。
大目的 | 目的 | 小目的 |
財務会計目的 | 債権者や投資家(第3者)への開示 | 財務諸表目的 |
会計管理目的 | 経営改善に活かすため
(外部への開示義務なし) |
価格計算目的 |
原価管理目的 | ||
予算編成目的 | ||
経営計画目的 |
出典:企業会計審議会「原価計算基準」
原価の内訳「3つの要素」とは?
「原価」と一口に言っても具体的には何を指すのか理解できていない人も多いかもしれませんね。
原価は「材料費」「労務費」「経費」の3要素から成り立っており、以下の表が示すように製造にまつわる費用を指します。
費目 | 具体的な費用 | |
原価 | 材料費 | 原材料費、部品費、素材費、消耗品費など |
労務費 | 製造に従事する人の給与、残業代、賞与、社会保険料など | |
経費 | 外注加工費、減価償却費、リース料、光熱費、修繕費、保守料、賃借料、製造設備に関する税金、福利厚生費 |
反対に原価にならない費用は、分かりやすくいうと「製造に直接関わらない費用」のこと。
さらに詳しく解説すると大きく分けて以下の3つとなります。
- 販売費 (①営業部門の費用 ②貸倒損失)
- 一般管理費 (①研究開発費 ②管理部門の費用)
- その他の損益(①支払い利息 ②固定資産の売却損益 ③法人税・住民税・事業税)
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原価計算の種類と使い分け方法
原価計算の種類は5つあり、それぞれ方法や目的が異なります。
以下で詳しく解説します。
1.標準原価計算
標準原価計算とは、製品を製造するにあたってかかる理論上の原価を算出することです。
目標原価とも呼ばれ、予算を立てるため、また実際にかかった原価と比べることで製造上どこにコストがかかりすぎているかなど問題点を把握するために使用します。
2.実際原価計算
「実際原価計算」とはかかった原価を集計したり、振り分けたりすることで製品ごとの実際の原価を把握する計算方法です。原材料費はもちろん人件費など製造にまつわる原価を含んで計算するため、正確な原価を把握しやすい計算方法です。
先ほど紹介した標準原価予算で事前予算を立て、この実際原価計算で算出した原価と比較し分析するのに用います。
3.直接原価計算
直接原価計算とは、製造原価に固定費を含めず計算する方法です。全部原価計算と同様に実際にかかった原価を計算します。
製造原価=変動費+固定費
製造原価は上記のように成り立っています。製造原価に含まれない固定費は期間原価として扱います。
ちなみに変動費は、製品の生産量に比例し増加するもの、たとえば原材料費や繁忙期の残業代などです。
一方、固定費とは製造量に関わらずかかる一定の費用のことを指します。たとえば、工場の地代家賃や機械のリース代や製造に関わる人の賃金などを含みます。
直接原価計算は、操業度が変わっても当期利益が変わらない点がメリットです。そのため、経営層の意思決定に用いる目的で利用されることが多いです。
4.総合原価計算
総合原価計算は、工場などで同一製品を大量生産する場合に用いられる計算方法です。具体的には、食品、繊維、石油精製や加工組立が中心となる自動車、家電、部品製造など、多くの業種で利用される計算方法です。
同一製品であれば、個々の原価は同額になるため、一定期間に製造した製品の原価は下記の式で計算することができます。
製品1つあたりの原価=集計した原価÷製造した数量
5.個別原価計算
個別原価計算とは、案件もしくは製品ごとに計算する方法です。
たとえば、Web制作システム開発、コンサルタントなどプロジェクト単位での受注製品に用いられます。
個別原価計算も、上記で解説した実際原価計算のひとつです。
原価計算の流れと仕訳例
ここからは実際の原価計算の流れを3ステップで解説します。
また、実際の仕訳例を示しながら解説しますので、初心者の方も参考にしてください。
1.費目別原価計算
原価計算の第1段階は「費目別原価計算」です。
まずは一定期間において下記の費用を費目別に集計しましょう。
- 材料費
- 労務費
- 経費
あくまで一例ですが、仕訳例を以下に示します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
材料 | 100,000 | 買掛金 | 100,000 |
労務費 | 200,000 | 未払費用 | 200,000 |
経費 | 50,000 | 買掛金 | 50,000 |
製造間接費 | 50,000 | 未払費用 | 50,000 |
製造間接費 | 30,000 | 未払費用 | 30,000 |
上記を費目別に分類します。
2.部門別原価計算
原価計算の第2段階は「部門別原価計算」です。
先ほど費目別で算出した製造間接費を、部門別に配賦し計算していきます。どの部門に、どのくらい原価がかかっているのか正確に把握するため必要な工程です。
配賦の方法は、自社に合わせて柔軟に対応する必要がありますが、部門別で直接賦課しづらい間接費はひとまず共通部門の間接費として取り扱います。
その後、稼働時間や専有面積、工数などで按分し共通費を各部門へ振り替えていきます。按分については定期的に按分方法や割合を見直すようにしましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
組立部門製造間接費 | 30,000 | 製造間接費 | 50,000 |
梱包部門製造間接費 | 20,000 | ||
組立部門製造間接費 | 10,000 | 製造間接費 | 30,000 |
梱包部門製造間接費 | 10,000 | ||
共通部門製造間接費 | 10,000 |
3.製品別原価計算
最後は、費目別原価計算で算出した原価と部門別原価計算で算出した原価を合計し、1製品あたりの原価を計算します。これを製品別原価計算といいます。
当期の直接費を仕掛品に振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 材料費 | 30,000 | |
労務費 | 30,000 | ||
経費 | 10,000 |
続いて、部門別原価計算で仕訳した製造間接費を仕掛品に振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 70,000 | 組立部門製造間接費 | 40,000 |
梱包部門製造間接費 | 30,000 | ||
共通部門製造間接費 | 10,000 |
今回は初心者にも分かりやすいよう、ざっくりとした簡単な仕訳で説明しました。基本的な流れや考え方は上記の通りです。
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まとめ
業種や製品、何を目的にするかにより最適な原価計算の種類が異なり、複雑な要素があるのは否めません。
しかし、会社の経営方針の決定や安定した事業運営のために正確な原価計算方法は欠かせません。上記の内容を理解し実践することで、適切な価格の設定、製造上の問題点の把握、利益の確保などに繋げることができます。